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経営者のための財務3表の読み方・使い方入門

「財務3表」という言葉を耳にしたとき、皆さんはどんな印象を持ちますか?
「数字が苦手だから避けたい……」「難しそうで敷居が高い……」と感じる方もいるかもしれません。
ですが、実は財務3表がわかると、会社のお金の流れや成長の可能性をぐっとクリアに捉えられるようになるんです。

私自身、以前は大手監査法人で企業の財務分析に携わっていましたが、その後スタートアップでキャッシュフロー管理の重要性に改めて気づかされました。
特に中小企業やスタートアップの現場では、売上が伸びているはずなのに資金繰りに悩む“黒字倒産”の話をよく耳にします。
「どうしてこんなことになるんだろう?」と不思議に思ったとき、やはり鍵になるのは財務3表への理解でした。

本記事では、財務3表と呼ばれるP/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)、C/F(キャッシュフロー計算書)の基本と、その読み方・使い方のヒントを一気にお伝えします。
「たった5分で押さえられるポイント」を意識しながら、数字を“読める”だけでなく“使いこなす”ためのアクションアイデアも紹介していきますね。
一緒に、事業をぐんと成長させるための財務基盤を学んでみませんか?

財務3表の基礎を押さえる

財務3表が教えてくれる“事業の健康状態”

まず、「財務3表」は大きく3つの書類から成り立っています。

  1. P/L(損益計算書)
  2. B/S(貸借対照表)
  3. C/F(キャッシュフロー計算書)

これらはそれぞれ独立した書類に見えますが、実は互いに補い合うように設計されています。
P/Lは利益構造を、B/Sは財務のバランスを、C/Fは資金の動きを可視化するもの。
もし「売上と経費だけ見ていれば大丈夫」とP/Lばかり追いかけていると、資金繰り(キャッシュフロー)の悪化に気づけなかったり、バランスシートが偏っているのに放置してしまったりしがちです。

「どれか1つだけ読んで満足していると、経営の全体像を見失ってしまう」

これは私が監査法人時代に先輩から教わった言葉です。
3つをバランスよく把握することで、会社の“健康状態”を総合的に診断できるようになるんです。

参考: 決算書とは?財務三表の読み方や作成方法等を解説

まずはP/Lから:利益を生み出す構造を知る

最初は「損益計算書(P/L)」を見てみましょう。
P/Lが示してくれるのは、ある期間における会社の収益と費用の関係です。
具体的には「売上総利益」や「営業利益」「経常利益」など、段階的に利益が表現されています。

  • 売上総利益:売上から直接的なコスト(仕入原価など)を引いたもの
  • 営業利益:売上総利益から販売費や一般管理費などを引いたもの
  • 経常利益:営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いたもの

もし「ここを読めば会社の成長力が見えるポイントは?」と聞かれたら、まずは「営業利益率」に注目してみるとわかりやすいです。
売上総利益率や経常利益率も重要ですが、営業利益率こそが本業での稼ぐ力を示す“心臓部”と言えます。
たとえば営業利益率が10%を超えると、事業モデルが強い・効率的な運営ができている可能性が高いなどの判断材料になります。

B/Sは「バランスシート」という考え方

次は「貸借対照表(B/S)」です。
その名の通り「バランス」を視点にした表で、会社の資産・負債・純資産が一覧で示されます。
資産と負債のバランス感は、いわばヨガのポーズのようなもの。
大きく偏りすぎるとどこかに無理が生じ、健康状態を損なうリスクが高まります。

B/Sを見るときは、ざっくり「資産がどれくらいあって、それをどういう負債や資本で支えているのか」をイメージしましょう。
特に経営者が注目すべきなのは「自己資本比率」や「流動資産と流動負債のバランス」です。
自己資本比率が低すぎると、借入金に依存しすぎている可能性がありますし、流動負債が流動資産を大幅に上回ると、近い将来の返済や支払いに必要なキャッシュが不足する危険性が高いです。

「B/Sは会社の姿勢や柔軟性を映す鏡」

と私は考えています。
大きく傾いたら体勢を立て直すように、B/Sの数字を定期的にチェックしてバランスを保っていきましょう。

C/Fはキャッシュの流れを掴む

最後に「キャッシュフロー計算書(C/F)」を押さえましょう。
「黒字倒産」という言葉を聞いたことがある方も多いですよね。
これはP/Lでは利益が出ているのに、実際に入金が間に合わなくて資金ショートを起こしてしまう状態を指します。
ここにC/F(キャッシュフロー計算書)の重要性があります。

C/Fは大きく3つの区分から成り立っています。

  1. 営業キャッシュフロー:本業の営業活動によるキャッシュの増減
  2. 投資キャッシュフロー:設備投資や資産取得によるキャッシュの増減
  3. 財務キャッシュフロー:借入や株式発行など、資金調達・返済によるキャッシュの増減

もし営業キャッシュフローが常にマイナスだったり、投資キャッシュフローに偏って手元資金が足りなくなっていたりすると、せっかく利益があっても支払いに追われる可能性が高いです。
「いつキャッシュが出入りして、どの時点でいくら必要なのか?」を可視化するのがC/Fの最大の役割。
タイミングを見誤ると経営の継続すら危うくなるので、ここはしっかりチェックしたい部分ですね。

3表を“経営に使う”実践アプローチ

数字を可視化するデジタルツール活用術

今はフィンテックが広がる時代。
クラウド会計や分析ツールを使えば、P/L・B/S・C/Fの数値をリアルタイムに確認できるようになります。
わざわざエクセルに転記して…という作業を減らせるだけでも、経営者にとっては大きな時短です。

  • クラウド会計ソフト:売上や経費を自動で仕訳してくれる
  • キャッシュフロー予測ツール:今後の入金・出金スケジュールをシミュレーション
  • ダッシュボード系アプリ:スマホで数字を一目チェックし、通知設定まで可能

こうしたデジタルツールを導入しておけば、SNS感覚で自社の財務情報をモニタリングできます。
「忙しくて数字を見る時間がない」という方ほど、こうした仕組みを使って一瞬で最新状況を把握してしまいましょう。
経営判断のスピードアップに直結するので、試してみる価値大です。

ファクタリングを活用したキャッシュフロー改善

私がスタートアップで実感したのは、「売掛金があっても手元にお金がない状態は非常にリスクが高い」ということ。
ファクタリングを使えば、売掛金を早期に資金化することでキャッシュフローを改善できます。
たとえば「取引先からの支払いが2か月後に確定していても、今すぐ運転資金が必要」というケースでは、ファクタリングが有効な選択肢になります。

  • メリット
    • 融資とは異なり、借金として計上しないためB/Sに負債が増えにくい
    • 早期の現金化で機会損失を防ぎ、攻めの戦略を取りやすくなる
  • 注意点
    • 手数料の設定をよく確認する
    • 取引先との関係や信用を考慮して、適切に進める

「先に資金調達できるなんて、意外と簡単なんですね!」

と驚かれることも多いですが、今はオンラインで申込み〜審査〜契約までできるファクタリングサービスが増えています。
必要な時にスピーディーに利用して、キャッシュの滞りをなくす工夫をしてみてください。

資金調達戦略と3表の連動

銀行融資やVC出資など、資金調達にはさまざまな手段があります。
ただ、それぞれが重視する指標が微妙に異なる点に注意が必要です。
銀行融資の場合は、B/SやC/Fで返済能力がしっかり示されているかを重視する傾向が強いです。
一方、VC出資では、P/Lの成長率やビジネスモデルの将来性に目を向けることが多いです。

ここで大事なのは、「相手が何を見ているか」を踏まえて3表を整えたり説明したりすること。
たとえば、VC向けには営業利益率と将来のスケーラビリティが説得力を持ちますし、銀行融資では、負債と資産のバランス、キャッシュフロー計画の現実性がポイントです。
3表の数字がしっかりしているほど、資金調達の場面でも信用力と交渉力がグッと高まります。

成功と失敗から学ぶリアルケース

スタートアップの財務管理成功事例

あるスタートアップA社では、設立初期からクラウド会計とキャッシュフロー予測ツールを導入し、毎週数字をチェックする習慣を社内に根付かせました。
まだ売上が小さいシード期でも財務3表をこまめに更新し、投資家や金融機関から質問があればすぐにデータを提示できるように準備していたそうです。
この徹底ぶりが「財務管理に信頼がおけるチームだ」という評価につながり、追加出資の獲得に成功。
結果的に、プロダクトリリースのスピードを早められてSNSを活用したマーケティングにも一気に資金を投下し、新規顧客獲得を加速させることができました。

私も執筆活動と並行してこうした事例に触れる機会が多いのですが、「最初は小規模でも数字をきちんと整備しておく」ことが、後々の飛躍を大きく左右していると痛感します。

財務3表を軽視して失敗したケース

一方で、スタートアップB社は黒字経営に見えて順調そうだったのに、実はキャッシュフローの状況が悪化していました。
売掛金の入金が遅れる時期と事業拡大の設備投資のタイミングが重なり、たちまち資金ショート寸前に。
当初は「利益が出ているから大丈夫」という思い込みがあったようですが、C/Fの見落としにより深刻なダメージを受けたそうです。

「数字がわからないわけじゃなかったのに、きちんと見ていなかった」

という後悔の声を聞くと、改めて財務3表を継続的にチェックすることの大切さが身にしみます。
万が一のときにどうリカバリするか、早めに銀行と相談しておく、ファクタリングでキャッシュを補う――そうした準備をしておけば防げた事例だったのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
財務3表というと少しハードルが高そうに感じますが、実は一度枠組みをつかめば「なるほど、こう繋がっているんだ」と理解が進みやすいものです。
私自身も最初は数字に対して強い苦手意識がありましたが、スタートアップで生々しいキャッシュの動きを体感したことで、一気に「面白い」と思えるようになりました。

「攻めの経営」を実現するには、まず土台となる財務基盤を整えることが肝心です。
P/L・B/S・C/Fをしっかり見て、足元の体勢を固めつつ、新しい資金調達やファクタリングの選択肢も積極的に活用していきましょう。
デジタルツールを導入して数字を見える化すれば、“黒字倒産”のリスクを大幅に下げながら、素早い経営判断ができるようになります。

最後に、私からのメッセージとしては「財務3表は怖いものじゃない」ということ。
自分がやりたいビジネスを伸ばすための“味方”になる情報源です。
まずは一緒に試しに触れてみて、「この数字は何を意味するんだろう?」と興味を持つところから始めてみませんか?
専門家やツールの力を借りれば、きっと「あ、こんなにわかりやすいんだ」と思えるはずです。
あなたのビジネスがより大きく羽ばたくための最初の一歩として、ぜひ財務3表を取り入れてみてくださいね。